2009年11月9日月曜日

住みたいと思えたところ

◎8月のエルサレムに恋して

冬のエルサレムはどうかわからないけれど、8月に訪れた夏のエルサレムは最高だった。新市街にあるマハネ・イェフダ市場の活気。そこでは、焼きたての香ばしい匂いがするパンやたくさんのお惣菜が、食される瞬間を待ち、おいしくて安いワインが豊富な種類のチーズと出会うのを待っている。新鮮な野菜や果物も実にいろんな種類があり、オリーブやアンチョビなんかも種類が豊富で、歩いているだけで、いろんなサンドウィッチのレパートリーが頭をよぎり、よだれがたれてくる。この市場があるだけで、ここに住みたいと思えるほどだ。




 また、市内の見所は旧市街に集まっていて、気負いせず歩いて観光が楽しめる。ゴルゴダの丘、嘆きの壁、岩のドームにオリーブ山。観光客が少し多めなのが気になるけれど、世界有数の観光地にしては、ゴミゴミ感が少ない。買い物も確かに値段を吹っかけられることがあるけれど、インドやエジプトやモロッコに比べれば、赤ん坊も同然。













 それでもエルサレムに住みたい!って思えた最たる理由は、その気候にある。とにかく「風」がよい。からっとしていて、ほどよく冷たい風。その風は、世界でも指折りだ、と僕は感じた。ゲストハウスにいても、ちょっと窓を開ければ、その「風」が入ってきて、気持ちがよい。冷房も扇風機もその「風」の前では邪魔なだけだ。そして、澄んだ青い空…

ある日、夕刻に新市街を散歩していたら、ちょっとした芝生の広場でフリーライブに出くわした。芝生に寝転んで、ワインとチーズとパンでほろ酔いになりながら、優雅でクラシカルな音楽を聴きながら、この世で一番気持ちのよいと思える風を浴びながら過ごす時間は、「至福」としか言い表すことのできないものであった。




◎皇帝が愛したボスポラス海峡に臨むイスタンブール

ボスポラス海峡に臨むイスタンブールは、ローマ帝国、東ローマ帝国、ラテン帝国やオスマン帝国の首都であった。この町には実に長い長い歴史が存在する。交通や貿易の要所であったことがその最たる理由ではあるだろうが、イスタンブールはそれだけではない。歴史地域にある丘からのボスポラス海峡の眺めが、これがもうほんとうに最高なのである。


 おそらくこの風光明媚な「景色」を我が物にしたくて、かつての君主たちはこの地を必死に得ようとしたのだと、僕には思えた。案外、貿易なんて二の次だったりする。人間の行動理由なんて実はそんなものだ。海は青く、空も青く、気候も素晴らしい。ゆったり海を眺めるのに申し分ない。それだけで、イスタンブールも住みたい町のランキングが上位に入る。








◎貧乏旅行者が愛したラマダン中のイスタンブール

 日没が近づくと、イスタンブールの至る所で張られている巨大テントやワゴン車で食事の準備が始まる。人々は、仕事も遊びも観光もほったらかして、一斉に列をなす。そして、日没の合図が流れると同時にテントでは食事が配膳され、ワゴンではお弁当をばらまく。







僕がイスタンブールにいるとき、ちょうど断食(ラマダン)の時期であった。これはけっこう有名な話だけれど、イスタンブールでは、ラマダンの時期、無料の食事が至る所で食べられる。僕みたいな異教徒でも、邪見に扱われることもなく、食事を毎晩タダでいただくことができた。意外と物価の高いトルコを旅する貧乏旅行者にとってはひじょうにありがたかった。





とは言え、イスタンブールでは他の多くのイスラム地区とは違いラマダンでも店を開けているレストランも多く、昼間に食事をしようとしてもあまり困ることはない。だから、貧乏旅行者でないとしても、ラマダンだろうがイスタンブールを十分に楽しめるので、無駄な心配は無用なのである。

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